カイロまで―日記より―
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ヨーロッパの旅
著:勅使河原蒼風
1900年生まれ。華道草月流の創始者。
1928年、第1回草月流展を開催し、軽快でモダンな花が評判となり、NHKラジオのいけばな講座を担当、この放送や以後の草月展を通じて草月流いけばなが広く知られるようになる。
華道において斬新な手法を多く提供し「花のピカソ」と呼ばれた。
ヨーロッパの旅
パリ
雨
しのぎいいと聞いてきたのではあるが、なるほどパリの夏はらくで、七月でも朝晩は寒いとおもうことがよくある。
わたしは暑がりやだからありがたいのだが、念のためにと持って来た冬のオーバーしかないから、早速、何かはおるものを買わなければならない。
それにちょいちょいおしめり程度の雨が、日によると三回も四回も降ったりまた照ったりして、すこしほてったなとおもうといいあんばいにさましてくれるというぐあいなのだ。
この雨が秋はさびしいんですよ、とよく人がいうから想像してみるのになるほど古い石で出来た都の雨はしんみりすることだろうとわかるような気がする。
女の人には傘をもっている人もあるが男はめったに傘をさしていない。少しぐらいはぬれるのがいい気持ちだといった顔をして平気でぬれて歩いている人が多い。
一つにはかなりひどくざあっときてもかならず間もなくさらっとあがることが多いからで、日本の雨のようにしつっこくないからだろう。