カイロまで―日記より―

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12/6/13
書籍「社労士が見つけた!(本当は怖い)採用・労働契約の失敗事例55」6/13発売しました。
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書籍「社労士が見つけた(本当は怖い)解雇・退職・休職実務の失敗事例55」3/28発売しました。
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書籍「税理士が見つけた!(本当は怖い)事業承継の失敗事例33」12/21発売しました。
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ヨーロッパの旅

著:勅使河原蒼風
1900年生まれ。華道草月流の創始者。  1928年、第1回草月流展を開催し、軽快でモダンな花が評判となり、NHKラジオのいけばな講座を担当、この放送や以後の草月展を通じて草月流いけばなが広く知られるようになる。  華道において斬新な手法を多く提供し「花のピカソ」と呼ばれた。

ヨーロッパの旅

土産話

オシャレ

 五月のはじめから七月の末まで向うにいたのだけれども、暑いと思わなかった。
 気候は随分違っている。それはむろん良く違っているわけで、しゃれるということについて非常に好条件である。
 いつも汗ばまない。ワイシャツを三日目に洗濯に出すのが惜しいくらい。少しも衿が汚れない。ほこりが立たない汗が出ない。これで夏ですかいと言うと、たしかに夏ですという。ちょっともばまない。
 わたしは非常にばむ性質なんだけれどもばまない。そのくらいしのぎ易い。
 だからわたしはパリは三季で四季じゃないというのだ。春、秋、冬しかない。夏がない。
 私は春に行ったわけだが、すぐ隣が秋なのだ。ばむ人たちにはごくしのぎいい。そこからおしゃれというものが生まれて来たと思う。
 まったく日本はしゃれにくい気候ですぐべたついたりじめじめしたりする。カイロなんかでも生活の様式を見たのだが、なかなかしゃれていて、暑いがちっとも汗ばまなかった。
 だいいち日本式のほこりというものがない。砂漠のくせにほこりがない。さらっとした砂で、どこへいっても着物、履物がちっとも汚れない。写真機なんかでもほこりがつかないでさらっとしている。砂漠というのはきれいなものだということをはじめて知って感心した。
 おしゃれといえば、ロンドンヘ行くとダブルを着て山高をかぶってコウモリ傘を持った紳士が、いかにもおれは世界一のおしゃれだぞというような顔をしてたくさんうろついていたが、ロンドンの夏はもう一つ寒くて、あれじゃしゃれるよりしようがない。
 その紳士の真似をこの汗ばむ国でやれというのだから辛いわけで、夏でも寒い国でこしらえた服装だからたまらない。花森安治じゃないが、わが国ではアロハのジバンが一番いいことはたしかなのだ。
 六月の末のロンドンで冬のオーバーを着っぱなしでも寒くてこまった。汗ばむというものは人間のしゃれ根性をなくしてしまって、ついだらしなくしてしまうのだ。